農的な暮らしを求め、東京から一家4人で四国へ移住した。凝り性で、食べることが大好き。自らスパイスを調合したカレーが好評で、ひょんなことから、「半農半カレー」生活を始めた。
あまり食べられない味
5月12日、香川県西部にある三豊(みとよ)市の市役所。永井博之さん(52)と妻の早苗さん(48)が、事前に注文を受けたカレー弁当の配達にやってきた。この日は、無水チキンとキーマと、辛口のブラックの3種類。スパイスのきいたカレーだ。昼休みに合わせて、市の職員らが直接受け取りに来たり、博之さんが庁舎内に届けに行ったり。配達を楽しみにしているという市職員は「この辺りではあまり食べられない味」と話す。
カレー弁当は、1個600~700円。配達は、市役所など月に6回ほどだ。新型コロナの感染拡大後から始めた。最初は10個でも余ったというが、口コミで広がり、いまでは1回に数十個の注文が来るようになったという。博之さんは「どうなるかと思っていたけど、ありがたい」。
永井さん夫婦は2016年、当時小学生の娘2人と一緒に、東京都内から縁もゆかりもない三豊市に引っ越してきた。自宅は、市役所から車で20分ほどの山あいにある古民家。まわりに畑や水田が広がり、家のそばまで竹やぶが迫っている。
博之さんは東京生まれの埼玉育ち。東京の会計事務所で働いていたが、40歳のころ、今後の人生、このままでいいのか悩んだ。東日本大震災を経験し、都市生活のもろさを感じたこともあり、食べ物を自給する農業への関心を持つようになったという。もともと、栽培方法にこだわった野菜の宅配サービスを利用しており、「自分で作ったらもっとうまいんじゃないか」との気持ちもあった。
最初から移住ありきではなか…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル