アスベスト(石綿)による健康被害を受けて死亡した兵庫県三木市の男性の遺族(47)が、石綿関連文書を労働基準監督署に廃棄されたのは不当だとして、近く国に損害賠償を求めて提訴する。石綿に関わる文書の廃棄は全国の労基署などで相次ぎ、2015年の厚生労働省の発表当時で約6万件に上る。遺族は「廃棄により、どの建材メーカーに健康被害の責任があるか、立証する手段が失われた」と訴えている。
厚労省は「裁判に影響が出るような事例は把握していない」としている。
文書の廃棄を巡るこうした訴訟は、石綿被害の弁護団が把握する範囲では初めてとみられる。ただ、全国では約200人が建材メーカーの賠償責任を問う訴訟を起こしており、遺族の代理人を務める谷真介弁護士は「廃棄の影響が各地の訴訟に広がる恐れがある。国が廃棄に対する抜本的な対策を講じなかった責任を追及したい」と話す。
訴状によると、男性は鉄工所を経営し、建設現場で溶接作業をした際に、他の業者が切断した建材などから飛散した石綿を吸った。石綿の影響で中皮腫を発症し、03年に54歳で死亡。08年に遺族の申し立てを受けて労災認定された。
遺族は今年3月、石綿を吸わ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル