聞き手・岡崎明子
ほめて育てたいのに、叱ってしまう。叱っているうちに、だんだん止まらなくなる――。私たちはなぜ、叱るという行為にふりまわされるのか。臨床心理士の村中直人さんは「叱る」には依存性があり、その効果が過大評価されているからだと言う。とはいえ、一切叱らない聖人君子にはなれない。「叱る」とのつきあい方を聞いた。
――子どもを叱った後は自己嫌悪に陥るのに、また叱ってしまう。どんどんエスカレートし、抑えられなくなることがあります。
「お子さんを叱るのは、どんなときですか」
――約束の時間になっても宿題を始めないときとか、親に口答えしたときとか……。
「心の奥では、子どもが自分の言葉に反応し、思い通りに動いてほしいと思っていませんか? そういう意味では、叱るという行為は即効性があります。それだけでなく、『相手が自分の言葉に従う』という自己効力感が得られるし、『悪いことをした人を罰したい』という処罰感情も満たせる。こんなにごほうびがあれば、『叱る』に依存性があっても、おかしくはありません」
――では、私は叱ることに「依存」しているのですか?
「乱暴な言い方をすると、人…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル