ステンドグラスやパッチワークのような、美しい配列の青いチョウの壁が目の前に広がる。今年10月、開館100年を迎える「名和昆虫博物館」(岐阜市)のモルフォチョウの展示コーナーだ。
その中には中南米中心に生息する、1キロ先からでもわかるといわれる青い輝きを放つ種類もいる。同館では、昆虫針で留められた、10種482匹が四つの特注ケースに一面に並ぶ。チョウの壁は、横2・8メートル、縦1・76メートルの大きさだ。
同館の研究員・松尾登貴雄(ときお)さん(67)が2004年7月に約2カ月かけてつくった。県外の博物館で見た展示がきっかけだった。「うちなら違う見せ方をする」。見る角度によって羽の輝きが変化し、きらめく様子に多くの人が足を止める。写真を撮りたくなる壁は「インスタ映え」先駆けの人気スポットとなった。
岐阜公園にある登録有形文化財の建物には、世界各地の約千種3500匹の昆虫が展示されており、年間約2万人が訪れる。
ギフチョウの発見者・名和靖氏が1919年に害虫駆除の普及啓蒙(けいもう)のために、設置した私設博物館だ。「60年ぶりに来たな」。そんな言葉とともに孫と訪れる男性もいる。100年を迎える今年、特別なことは予定していないという。5代目の館長である名和哲夫さん(64)はこう話す。「それぞれの昆虫自体に魅力がある。それを引き出す手助けをするのが、我々の仕事です」(吉本美奈子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル