23日に開かれた全日本吹奏楽コンクール高校の部。3年ぶりに名古屋国際会議場の舞台に帰ってきた関西代表の淀川工科(大阪)=銀賞=には、これまでの「淀工サウンド」に新しい表情が加わっていた。
「舞台に入るところからお客さんを魅了して、一音吹いたところで『すごい』と思わせたい」
部長の和田有生(ゆうき)さん(3年)は、そんな戦略を立てて舞台に臨んだ。いすが足りない、アナウンスが間違える、などあらゆるハプニングを想定して、どんな状況でもいつも通りの演奏ができるように、対応する練習もしてきたという。
舞台では、全員が3階席の方向を見上げて演奏開始を待った。最前列のフルート井神日菜歌(ひなた)さん(同)は、「うれしすぎて笑顔が止まらなかった」。
淀工の「十八番」となっている「大阪俗謡による幻想曲」(大栗裕作曲)は、まさに淀工ワールド全開。体全体を音楽に乗せて揺り動かし、天神祭がモチーフとなった曲で会場を盛り上げた。顧問の出向井誉之教諭(55)も「祭りは楽しまな損」と、指揮台の上で踊るように指揮棒を振った。
長年、淀工の生徒たちを全国の舞台に率いてきた丸谷明夫さんが昨年12月に76歳で亡くなった。丸谷さんがいない初めてのコンクール。淀工サウンドをどうやって受け継いでいけばいいのか。丸谷さんと二人三脚で歩んできた生徒たちには、指導者を失った悲しみと、これからを考えて悩む時期があったという。
それでも部長の和田さんを中…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル