事件や災害、行方不明者の捜索で活躍する警察犬。彼らと日本一長く向き合ってきた現役の警察官が、福岡県にいる。37年間をともに歩んだのは23匹。県警の訓練所にレジェンドを訪ねた。
「トムは動けなくなってからが長くて。1年つきっきりで介護した」「ジャックは不法投棄現場に埋められた遺体を発見した」「エースは一番手がかかったけど、最後は行方不明者を何人も見つけた」
訓練所に飾られた犬たちの写真を眺めながら、警部補の村上年一さん(58)が説明してくれた。肩書は鑑識課の警察犬係長だ。
高校生のときに警察犬に興味を持った村上年一さんは、警察官として23匹と歩んできました。記事の後半では、「相棒」たちと解決してきた数々の事件、そして別れを紹介します。
子どもの頃から雑種犬やリス、インコなど色んなペットを育てていた。夢は動物園の飼育員。そんな少年が3匹目の犬として世話を始めたのが、シェパードのターガだ。
初めての大型犬。「飼うならしつけが必要だ」と、高校2年のときに両親に連れられ、民間の訓練施設を訪れた。
預けたターガが「伏せ」などを次々と覚える姿に感銘を受け、訓練士に興味が湧いた。電話帳で調べた各地の施設に「訓練士になりたい」と手紙を書いては、見学に出かけた。
1980年。ある訓練所で、県警が74年から警察犬の運用を始めていると聞いた。「捜査現場に出る犬の訓練はやりがいがありそうだ」。高校を卒業し、警察官をめざすことにした。
先輩に隠れて試した妙案
警察署に配属されて1年半後の84年、念願の警察犬担当に。運用開始から既に2匹が引退していたが、訓練所の犬舎には、現役のタローとジロー、トムの3匹とともに、引退した初代警察犬のタンがいた。
犬舎の掃除に始まり、訓練を…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル