永田豊隆
甘辛い味付けで知られる兵庫県の郷土料理・イカナゴのくぎ煮。毎年春、大阪湾や播磨灘では、稚魚をとる新子(しんこ)漁が風物詩となっている。しかし、夏以降、この魚は海の中でどうしているのだろう。
いかなごのくぎ煮振興協会(神戸市)によると、イカナゴは冷たい水を好み、動物プランクトンを餌にして活動する。2~3月ごろ新子漁が終わってからも成長を続け、6~7月には体長10センチほどになる。ただ、このころには水温が上昇して20度を超えるため、イカナゴは海底の砂に潜って活動を停止する。
これを冬眠ならぬ「夏眠」という。その間は5カ月以上も餌を食べない。
12月ごろに海水温が13度ほどに下がると動き出し、砂に卵を産みつける。ふかした稚魚が3~4センチに育つ春先、新子漁が始まる――というのが1年のサイクルだ。おいしいくぎ煮をつくるにはイカナゴの鮮度がカギといわれ、神戸港や播磨灘沿岸部では、とれたその日に大鍋でしょうゆや砂糖とともに炊く家庭が多い。軒先から香ってくる甘辛い香りも春の風物詩だ。
ただ、近年、漁獲量の激減が続いており、原因として海の栄養塩不足が指摘されている。同協会事務局長山中勧さん(56)=伍魚福社長=は「郷土の食文化を守るためにも、自治体とも協力して対策に取り組みたい」と話している。(永田豊隆)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル