昨年12月のある日、徳島自動車道を東に向けてひた走る四輪駆動車があった。ハンドルを握るのは、徳島県三好市の谷尚美さん(63)。後部座席にはキャリーケースに入った子ネコが1匹乗っていた。午前中、美馬市で保護されたネコだった。
谷さんは県内で7人しかいない「アニマルケースワーカー」の1人だ。飼い主のいないネコの保護などに携わるため、県が2021年度から設けた。
捨てネコなどの野良ネコは放っておくと数が増えすぎて、地域で厄介者扱いされ、命を落とすこともある。そんな「不幸な命」を減らすために、保護ネコに避妊去勢手術(スペイ)を受けさせるのが谷さんが車を走らせた理由だった。
この日は徳島市の動物病院でスペイを済ませた直後、三好市の山間部の高齢住民からも「ネコを保護した」と連絡が入った。谷さんはすぐにUターンし、再びネコを乗せて徳島市に向かった。車の走行距離は1日で300キロにもなった。
「過酷な状況に置かれた動物を少しでも減らしたい」。そう話す谷さんの本業は、三好市に拠点をおく衛生業の経営トップだ。アニマルケースワーカーの活動は、休日を返上して取り組んでいる。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル