毎週火曜の朝、福岡市博多区にあるカトリック福岡司教区の施設「美野島司牧センター」の講堂に、温かい湯気と香りが立ちこめる。ホームレスや生活困窮者のためにボランティアがつくる料理に、100人近くが集まってくる。
センターの入り口のマリア像の台座に、「人はパンだけで生きるのではない」とある。責任者のコース・マルセルさん(80)は、この言葉にこんな思いを重ねる。
「ここに集まる人がご飯を食べるだけではなく、お互いに話をしたり、友達になったりして、分かち合える雰囲気をつくりたい」
センターには実に様々な人が集まる。週末にはスペイン語のミサが開かれる。外国人労働者を支援する市民団体や、薬物依存と闘う人のリハビリ施設「九州ダルク」もここを拠点に活動している。センター開設以来、約30年にわたってここで暮らすマルセルさんは「社会の周縁から日本を見ることができました」という。
年老いた船乗りから聞いた「日本」
故郷はフランスのブルターニュ地方の町。父はアルザス地方の出身だが、母の弟2人が第2次世界大戦で戦死したことから、母の実家のパン屋を継いだ。
周囲と同じく、父は熱心なカトリック信者だった。毎年のクリスマスに「プレゼントをもらえない子どものことを忘れてはいけないよ」と教えられた。
隣の家に年老いた元船乗りの…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル