午後6時。東京電力福島第一原子力発電所から約8キロ離れた福島県富岡町に暮らす鈴木みなみさん(32)が、長女のみちるさん(6)を連れて自宅に戻ってきた。すぐに夕食の準備に取り掛かる。
この日のおかずは鳥のつくねハンバーグ。春菊のみそ汁を作っていると、近くに住む辺見珠美さん(34)が台所に入ってきた。手には、地元の農家にもらった落花生の塩ゆでを持っている。数年前、復興の仕事を通して知り合った仲間だ。
「スープの冷めない距離に住んでいるから、自然と一緒に食べることが多いです。娘と2人だけでご飯を食べるのが、意外と少ないです」と鈴木さんが教えてくれた。
2019年、鈴木さんは夫と離婚して町に引っ越してきた。それまで暮らしていたいわき市では、発達障害を抱えるみちるさんを育てるのが難しかったという。仕事での知り合いはたくさんできたが、子育ての悩みを相談できるような人間関係に恵まれなかった。
みちるさんを寝かせるのに、4~5時間はかかる。日付が変わっても寝られないことがあった。「寝かしつけも出来ないの?」と他人から言われるのが怖かった。それが出来ないのは自分のせいだと思い込んだ。
東日本大震災から12年となるいまも、福島では原発事故の影響が色濃く残っています。帰還困難区域が残る町の食卓から、福島のいまを見つめます。
富岡町に感じた魅力
さらにみちるさんは、外出す…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル