国が昨年10月に決めた東京でのタクシー運賃の引き上げをめぐる訴訟で、東京地裁(鎌野真敬裁判長)は、国土交通省関東運輸局長に対し、引き上げに反発する都内のタクシー会社2社への運賃変更命令や事業許可の取り消しを、判決が出るまでの間、差し止める決定を出した。2月28日付。「引き上げは考慮が尽くされていない」とした。
原告はロイヤルリムジン(東京都江東区)と同社の子会社のジャパンプレミアム東京(同中央区)。主に固定客からの予約送迎を中心に営業している。
東京23区などの特定地域では、タクシーの供給過剰による過度な運賃競争を避けるため、「公定幅運賃制度」があり、タクシー業者は国が決める範囲内の運賃で営業する必要がある。
決定などによると、関東運輸局は昨年10月、人件費や燃料費の増加などを理由に、東京特別区・武三交通圏(東京23区と武蔵野、三鷹両市地域)の公定幅運賃を11月から引き上げると決めた。
原告は他の交通機関などに顧客が流れる恐れがあるなどとして、従来と同じ運賃で営業。引き上げは不当だと主張し、行政処分を差し止める訴訟を起こした。
地裁は、引き上げは予約送迎を中心に事業展開する業者への影響が大きく、固定客を失ったり、運転手の労働条件悪化につながったりしうるため「特に慎重な検討が求められる」と述べた。そのうえで、国が運賃幅を決めるのは過当競争を避けるためなのに、引き上げ時点ではタクシーの供給不足も見受けられ、過当競争の恐れなどが十分考慮されていない、と指摘。「裁量権の逸脱や乱用があると一応認められる」と述べ、一審判決が出るまで2社への処分を仮に差し止めた。
原告のロイヤルリムジンの金子健作・代表取締役は会見で「公定幅運賃の違法性を指摘したもので、画期的だ。全国で運賃の値上げが申請され、消費者としても事業者としてもゆゆしき事態。全国で大幅な引き上げが行われないことを願っている」と話した。
関東運輸局は「決定内容を十分に検討し、方針を決定する」とコメントを出した。(田中恭太)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル