ペットショップや繁殖業者のもとにいる犬猫の飼育環境を改善するため、環境省が2021年に定めた飼養管理基準省令。激変緩和として既存業者に経過措置が設けられていた飼育ケージの面積などに関する規制も昨年6月、施行され始めました。実際に業者の指導にあたる自治体の現場で省令は有効に機能しているのか、独自に調査しました。
「レッドカードを出しやすい明確な基準にする」。制定にあたり小泉進次郎環境相(当時)がそう表明したように、飼養管理基準省令の施行により悪質な業者が改善、淘汰(とうた)されることが期待されている。「レッドカード」につなげやすいと考えられているのが、昨年6月から既存業者にも適用されるようになった、飼育ケージの最低面積(容積)やメスの交配年齢を原則6歳までなどとする規制。同時に段階的な施行が始まった、従業員1人あたりの上限飼育数に関する規制も効果的だとみられている(24年6月完全施行)。
新省令の施行まで、動物愛護法やその細目などには定性的であいまいな基準しかなかった。たとえばケージの広さについては細目で、「入れる動物の種類及び数は、ケージ等の構造及び規模に見合ったものとすること」などとしか書かれていない。そのため実際に監視にあたる自治体は、業者への指導や処分を適切に行えなかった。そこで新省令では、運動スペースを伴わないタイプのケージの広さを「縦の長さが体長の2倍以上、横の長さが体長の1・5倍以上」などと具体的に数値で規定した。体長30センチの小型犬なら縦60センチ以上、横45センチ以上のケージが必要となる。違反の有無は一目瞭然となった。
立ち入り検査、終えるめど立たない自治体も
そんな新省令が自治体の現場で有効に機能しているのかどうか、朝日新聞は昨年12月、動物愛護行政を担うすべての都道府県、政令指定都市、中核市に調査を行った(129自治体、回収率100%)。繁殖業者やペットショップに対する監視や指導を担う自治体はそのうち107ある。まず、監視や指導に欠かせない立ち入り検査はどの程度進んでいるのか。回答を集計すると、すべての業者への検査を終えた自治体は15、今年度中に終えるという自治体は24にとどまった。
来年度までかかる自治体が41にのぼり、立ち入りを終えるめどが立っていない自治体も27あった。確認事項が多岐にわたり、検査時間が長くなる傾向があることが背景にあるとみられ、たとえば今年度中に終了予定の岐阜県も「1件あたりの監視・指導の時間が30分程度から1時間程度に増大した」。職員数が限られる中核市を中心に「人員不足のなか業者への立ち入り検査の時間がなかなか確保できない」(福島県いわき市)などの声も寄せられた。
一方、新省令が適切な指導につながっていることは確かなようだ。埼玉県の担当者は「これまでのあいまいな基準では、ケージが『狭い』と指摘しても、業者は『十分だ』と主張して水掛け論になっていた。新省令によって業者からのそうした反論はなくなり、指導が徹底できるようになった。多くの業者で、飼育環境は改善した。今までより立ち入り検査に時間がかかるが、そのぶん将来的に、状態が悪い業者の指導で苦労することは減るだろう」と話す。調査の自由記入欄には「より詳しく、的確に指導できるようになった。犬猫の飼養環境は向上している」(和歌山県)、「指導のばらつきは確実に少なくなった」(大分県)、「具体的な指導がしやすくなった」(浜松市)などと、新省令の実効性の高さを評価する声が多く集まった。
結果として、口頭や文書による「指導」の対象になった事業所は全国で計約4千にのぼった。98業者への指導を行った福岡県は「身動きができないような狭さで飼育されていた犬猫の飼育環境が改善された」とする。
ただ「勧告」にまで至ったの…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル