「どうせ買うなら安いうち」。消費税が10%に上がる直前の週末、日用品を買い求める客が店に駆け込んだ。タイヤに、酒に……。
増税直前の週末となった29日朝、カー用品大手の「オートバックス環状通・光星店」(札幌市東区)は、開店とともに客が訪れた。今年から北海道勤務になり、冬用タイヤを買いに来た札幌市中央区の会社員田辺博さん(51)は「タイヤを交換するには少し早いので、自宅で保管したい」と話した。
店では、9月の冬用タイヤの売り上げが昨年の3倍以上、夏用タイヤも2倍以上だ。冬タイヤは、例年なら初雪が降る頃から売れ行きが伸びるという。札幌の初雪は平年10月末だ。
タイヤの仕入れ価格は今年8月から上がっているが、10月の増税までは据え置いてきた。長谷川富士夫店長は「値上がりを知って、『ならば』と買う人も多いのでは」と語る。
愛知県北名古屋市のカー用品店「スーパーオートバックス・ルート22北ナゴヤ」でも、9月の冬用タイヤの売り上げは昨年同期比の約5倍、夏用タイヤは約1・5倍だという。冬用タイヤを4万5千円ほどで買った同県稲沢市の会社員男性(39)は「去年から買わなければと思っていた。どうせ買うなら1%でも2%でも安い方がいい」。
今回の増税で軽減税率の対象から外れた酒類。酒店ではまとめ買いする客足が途絶えない。
酒専門店「やまや南柏店」(千葉県柏市)では、ビールや缶チューハイなどが通常の2割増で売れている。千葉県松戸市の主婦、笠原祐子さん(59)はビール箱(24本入り)を2箱とチューハイ5本を買った。普段より多めで、「来週買うくらいなら、今日買っとこうと思って」。
ストロング系の缶チューハイなど約90本をびっちり袋に詰めてカートに乗せ、車に積み込んだ同市の会社員冨所恵子さん(41)。これからスーパーに立ち寄って、食品を買いだめするという。「食品は8%のままですよ」と記者が伝えると、「え? 軽減税率の対象なんですか? 分かりにくいですね」と苦笑いして立ち去った。
ネット通販も好調だ。楽天では9月下旬から、洗剤やトイレットペーパーなどの日用品やコンタクトレンズ、化粧品の販売が急増した。広報担当は「増税が迫ったことに気づいて、あわてて購入した人が増えたのでは」とみる。(前田健汰、大野晴香、鶴信吾)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル