作業員2人が死亡した核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」(茨城県東海村)の臨界事故は30日で発生から20年となった。長年にわたる会社ぐるみの違法操業が発覚し、同社の安全軽視の姿勢とともに、国によるチェック態勢の甘さが露呈した。事故を受け、国はルールの順守状況を確認する検査態勢を確立。だが、事故対応に当たった専門家は事業者側に独立した権限を持つ「安全のプロ」を置くよう求める。
JCO事故では、放射線の発生源となった施設直近の放射線量は平常時の1万倍以上に、同社敷地の周辺でも100倍以上に達し、多数の住民らが被曝(ひばく)した。
現場で行われていた高濃縮ウラン溶液を製造する作業は、危険な状況を生みだしかねず、慎重さが求められる作業だった。しかし、同社ではウラン溶液をステンレス製のバケツで扱い、さらには一度に大量に沈殿槽へ投入するなど多くの違法行為が発覚。事故の数年前には臨界事故の危険性が認識されていたが、組織ぐるみで黙認していた。
国は直ちに法改正し、JCOのような加工業者に義務づけられていなかった設備の定期検査制度を追加。また、事業者が保安規定を順守しているかチェックする年4回の検査を新たに義務化し、検査担当者を全国の原子力施設がある場所に常駐させた。原子力規制庁の担当者は「事業者へのチェック態勢が性悪説に立つようになった。大きな転換点だった」と話す。
ただ、JCO事故の対応に当たった日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)の斎藤伸三元理事長(78)は「事業者側にも社内で安全に対する取り組みを専門的、第三者的に監督する『安全のプロ』を置く必要があり、さらにその権限を担保する仕組みも必要だ」と指摘する。
以前から事業者には国家資格を有する保安責任者の配置が義務づけられているが、JCO事故では作業効率など“組織の論理”が優先され、事故発生後も無力に等しかった。斎藤氏は「施設のことを一番よく知っているのは現場の人間。自分たちで(未然防止も事故対応も)しっかりと対応できるようにするべきだ」と話す。
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JCO臨界事故 平成11年9月30日午前10時35分ごろ、茨城県東海村の核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」東海事業所で、高濃縮ウラン溶液を製造する際、核分裂反応が継続される臨界が発生した。現場の作業員2人が急性放射線症で死亡し、救助活動に当たった消防隊員や周辺住民ら約660人が被曝した。事故を受け、安全を守るための保安規定を順守しているか、原子力事業者が国の検査を受けることが義務化された。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース