まだ肌寒さの残る4月上旬のこと。病気で保育園を休んだ4歳の女の子が、母親が少し家を空けた間に姿を消した。事件・事故に巻き込まれる恐れだけでなく、体調悪化の心配もある危険な状況を救ったのは、小学3年生の女児8人組の機転だった。
新学期最初の登校日だった10日。午前で学校が終わり、稲葉優美佳さん(9)は同級生の友だち7人と、新潟市西区の近所の公園に遊びに出かけた。
午後3時ごろ、水道で靴の汚れを落としているときだった。「うえーん」という泣き声が聞こえ、声のする方に駆け寄った。出入り口付近で、パジャマ姿の女の子がうずくまって泣いていた。裸足で、おなかにカイロを貼っていた。
友だちもみんな集まってきた。「どうしたの?」と尋ねると、女の子は「迷子なの」と心細そうな様子。名前や年齢は言えても、家の場所までは説明できず、近くの駐在所に連れて行くことにした。
駐在所はパトロール中で不在だった
駐在所はパトロール中で不在だった。そこをちょうど高齢の女性が通りかかった。とっさに「この子が迷子なんです」と伝えた。女性は公衆電話から110番通報してくれた。
その頃、両親からの届け出を受け、警察が女の子を捜していた。母親が愛犬を散歩させている間に家からいなくなっていたという。女性の110番通報で駆けつけた警察官に保護され、女の子は両親と再会。稲葉さんたちに「ありがとう」とお礼を言ったという。
新潟県警は26日、稲葉さん、中野羽星(るせ)さん、頓所(とんしょ)遙乃(はるの)さん、鈴木佑奈さん、椎野千咲さん、成合(なりあい)彩夏さん、原田栞凪(かんな)さん、小林葵さんの8人に感謝状を贈った。桑山朗・新潟西署長は「大人でも見過ごしてしまうような異変に気づき、心配する気持ちを行動に移してくれた」とたたえた。
稲葉さんは「放っておいたら不審者に連れて行かれてしまうかもしれないと思った」と振り返り、「女の子にけががなくてよかったです」とほほえんだ。(宮坂知樹)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル