中東や東南アジアなどで、紛争下に生きる人々を取材してきたフォトジャーナリストの安田菜津紀さん(36)が5月、自身のルーツをたどった本「国籍と遺書、兄への手紙」(ヘウレーカ)を出版した。
終戦直後に京都市伏見区で生まれた安田さんの父は、在日コリアン2世だったが、韓国籍と明かさないまま亡くなった。なぜ出自を語らなかったのか。著書では、安田さんが伏見区や京都府宇治市、韓国の釜山などを現地取材し、自身のルーツについて考えを深める過程がつづられている。
5月28日、安田さんは伏見区の絵本店「絵本のこたち」で思いを語った。翻訳者で移民研究者の栢木(かやのき)清吾さんが司会を務め、オンラインも含め約40人が耳を傾けた。
安田さんが幼い頃、母は1カ月に300冊の絵本を読み聞かせてくれた。一方、父が読むと、何度もつっかえた。「お父さん変だよ。日本人じゃないみたいだよ」と言うと、父は笑いながらも悲しそうな表情を浮かべていた。
中学生の時、父と安田さんより13歳年上の異母兄が亡くなった。高校時代にパスポートを作るため戸籍を確認した際、父が韓国籍だったこと、兄が非嫡出(ちゃくしゅつ)子だったことを初めて知った。
「戸籍を見た時は驚きました…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル