性的少数者に対する理解を広めるための法案づくりの議論が国会で進んでいる。8日には、同性婚実現を目指す人たちによる「同性婚訴訟」の全国5地裁の判決が出そろい、多くが国への変化を促す判決となった。世の中は変わっていくのだろうか。8日、福岡地裁判決に臨んだ当事者たちの会見で印象に残った言葉やコメントから、性的少数者の現在地を紹介したい。
《訴訟に関わって3年。私たちも年を重ね、子どもの背は20センチ伸びました。今回の判決で考えるのは、この3年で何が変わったのだろうということです。色々と変わってきた感じはある。でも実際には何が変わったのだろう。私たちはいつになったら家族で、この国で安心して暮らせるのだろう。いつか、日本でも同性婚ができる。という言葉を耳にします。でもこの「いつか」は誰によって、何によって決められているのでしょうか》(原告でいずれも40代女性のミコさん、ココさん)
8日の福岡地裁判決は、同性婚を認めない民法などの規定を「違憲状態」とした。憲法24条2項の「(婚姻に関係する)法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」との条文のうち、判決は「個人の尊厳」部分に着目し、同性カップルについて「法的に家族として承認されないことで重大な不利益を被っており、『個人の尊厳』に照らして到底看過できない」と国会に法整備を促した。
ただ、同性婚に対する国の姿勢はここ10年近く変わっていない。原告の6人も多くが同じ気持ちを口にした。
《一刻も早く議論が必要。一方で、(世論調査で同性婚への賛否について)60代以上の人たちの意見は拮抗(きっこう)していると。そんな人たちが(大勢)国会にいらっしゃるので、議論が始まらないから、こうやって裁判を起こした。その裁判所が、国会に話せばと、国会に(議論を)話す余地があると投げてしまっては、私たちの思いはどこにぶつければよいのでしょう》(原告で福岡市在住のこうすけさん=33歳)
《日本の政府は2015年から、同性婚を求める声に対して、「我が国の家族のありかたの根幹に関わる問題で、慎重な検討を要する」と総理大臣が代わっても、何年経っても同じ言葉の繰り返し》
《24条2項の「違反する状態にある」と言われてうれしかったが、だんだんと話を聞いていくにつれて、結局判断を国に投げるんだなというのを言葉から感じて気落ちする部分もあった》(原告で熊本市在住のこうぞうさん=40歳)
福岡地裁での訴訟では、同性婚や性的少数者に対する世の中の理解がどこまで進んでいるのか、も判決の重要な判断材料になったようだ。判決では、理解が広がっているとしながらも、「国民意識として同性愛者のカップルに対する法的保護に肯定的な意見が多くなったのは比較的最近」「婚姻についての社会通念や価値観が変遷しつつあるとは言い得るものの、同性婚が異性婚と変わらない社会的承認が得られているとまでは認め難い」と慎重な見方も示していた。
《政府の人権に対する関心が…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル