金子和史
労働組合「東京管理職ユニオン」に虚偽の事実や似顔絵が書かれたビラを配られ、名誉を傷つけられたとして、一般財団法人「あんしん財団」の理事長が組合と代表者に約1千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が14日、東京地裁(村田一広裁判長)であった。判決は、「組合活動として社会通念上許容される範囲とは認められない」として、組合側に88万円の賠償を命じた。
判決によると、財団は2015年、複数の職員に転居を伴う異動を命令。職員らは不当な異動だとして提訴し、組合にも加入した。組合は財団本部前や理事長の自宅の最寄り駅付近で「パワハラ理事長」「遠隔地配転を強行」といった言葉や理事長の似顔絵を載せたビラを配るなどした。
判決は、ビラは理事長の名誉を傷つけ、理事長個人が異動を強行したと受け取れる内容も真実とは言えないと判断。似顔絵も「パワハラをした人物として強く印象づける」と違法性を認めた。
また、理事長宅の最寄り駅付近での街宣活動は「心理的圧力を加えることを意図したと推認せざるをえず、必要性・相当性があるか疑わしい」と指摘し、「理事長の私生活上の平穏を侵害する」と認定した。
組合側は、財団の職員の地位向上を目的にした正当な組合活動の範囲内だと主張したが、判決は「理事長としての経営責任を問うことを超えて、個人に対する人身攻撃と評価できる」と退けた。(金子和史)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル