小さな女の子が広い通りを全速力で走っていった。
上下ピンク色の洋服。足元の長靴もピンクだ。大人でも追いつけないようなスピードで、ポニーテールが揺れていた。
4月30日午後5時25分ごろ、岩手県二戸市の中心部。買い物帰りで近くを通りかかった県立一戸高校2年の小林さくらさん(16)は、周辺の道路の往来を見て、危険を察知した。
すぐに道路の反対側から横断歩道を渡り、ダッシュして追いかけた。何とか捕まえ、しゃがみ込んで女の子と目線に合わせる。そっと両肩に手を添えた。
「どこから来たの?」
「あっち」
「どこに行くの?」
「あっち」
おしゃべりはできるが、家も名前もわからない。
「そうなんだ。でもね、この辺、車が多くて危ないし、もうすぐ暗くなるし、変な人も出てくるかも知れないから一緒に行こうね」
優しく声を掛けたが、女の子は振り切るように再びパーッと走りだした。
また追いかけっこが始まった。
全速力で走る小さな女の子。このままでは用水路に転落したり、交通事故に遭ったりする危険もある。たまたま通りかかった高校2年の小林さくらさんは必死で追いかけた。
脇目も振らずに走り続ける女…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル