東京でおいしい水を求めて飲食店主らが集うエリアがある。都内の自治体で唯一、水道を深層地下水のみでまかなう昭島市だ。ミネラルウォーターと変わらぬ水道水というが、その味とは。
中出悠太郎さん(37)は当時、いい場所を探し求めていた。初めての自分の店を開きたい。JR中央線や青梅線沿いで、いいところはないか。
たまたま立ち寄った昭島市内の不動産屋で、コップ一杯の水を出された。
衝撃だった。口いっぱいに広がった「甘さとまろやかさ」。開業場所が決まった瞬間だった。
パスタにもコーヒーにもビールにも
2年前に古民家を改装してオープンした「昭島パスタ工房」。中出さんはここで、昭島の水をつかって製麺したパスタをたっぷりのお湯でゆでる。パスタソースだけでなく、自家焙煎(ばいせん)の豆でいれるコーヒーにも水道水をつかう徹底ぶりだ。
いまや都内外から客が訪れ、予約だけで満席になる日もある。「水がいいおかげか、パスタソースが麺によくなじむ感覚があります」
千田恭弘さん(39)はJR昭島駅南口でクラフトビールをつくる。もちろん昭島の水を利用している。
脱サラして2018年に店を構える際、都内各地で出店場所を探した。以前から昭島に住んでおり、水の良さはわかっていた。
市内で化石が発見されたクジラの古名から、店名は「イサナブルーイング」。窒素ガスを使った、細かい泡とまろやかな口当たりが特徴のビールを醸造し、ビアバーも併設する。
ビールの風味は、水そのものの味よりも、醸造の仕方で大きく変わるが、「おいしいビールをつくる条件の一つは、水の良さで間違いない」と断言する。
うまさの秘密、市に聞いてみると
なぜ昭島の水はうまいと言えるのか。
市によると、水道水のもとに…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル