採算が厳しい地方のローカル線を残すべきか。
全国で、そんな議論が繰り返されている。だが高齢化が進んだ地域では今、鉄道だけでなくすべての公共交通が細り、生活を支える移動自体が危機にある。「生活していけるかどうか」の瀬戸際に立つ地域を訪ねた。
線路は続くか
地域の「足」となってきたローカル鉄道が廃線の危機を迎えています。地元に広がる不安。現場からの報告です。
JR松江駅から南に約30キロ。山あいにある島根県奥出雲町三沢地区に、約400品目の食料品を積んだ移動販売車がやってきた。登録している住民の家の前に止まると、待っていたように高齢の夫婦が自宅から出てきた。
「今日は野菜がたくさんで。どげですか」
運営する地区のNPO「ともに」の職員が声をかける。職員は、Iターンしてきた30代。地元のスタッフと2人組で毎週この地域を巡回しており、高齢者との会話も弾む。
「ともに」は毎週火曜と木曜、地区内を20カ所ほど回る。隣の三成(みなり)地区には、JR木次(きすき)線の駅や町立病院、スーパーがあるが、そこへ向かう町の三セク「奥出雲交通」の路線バスは2、3時間に1本。最寄りのバス停まで1キロ以上ある家もざらで、三沢出身で「ともに」理事長の吉川英夫さん(45)は「家族や近所の人に車に乗せてもらわないと生活ができない。高齢化で、運転できる人も減っている」と話す。
約600人が住む三沢地区の中心部には、かつてJAの店舗があったが、2019年に閉店。畑の管理など高齢者の生活支援をしてきた「ともに」が21年、跡地に週3回営業のマーケットをオープンさせた。店舗スペースの半分にはソファを並べ、住民が集える「サロン」とした。
日常生活はできても…
だが、いくらマーケットやサロンができても、気軽に通えないと続かない。
そこで「ともに」は、マーケ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル