東京五輪・パラリンピックという国家プロジェクトのために奔走したつもりだったが、検察に逮捕された。起訴内容は認めたものの、法廷での説明には「含み」があった。悪いのは自分だけなのか――。
7月5日、東京地裁の104号法廷。初公判を迎えた大会組織委員会大会運営局の元次長・森泰夫被告(56)は、満員の傍聴席を背に証言台の前に立った。
組織委が発注したテスト大会や本大会の運営業務について、広告最大手「電通」などと一緒に、競技会場ごとの受注業者を事前に決めたとして起訴された。
「間違いありません」。裁判の冒頭、独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪を認めた。
市場規模は計約437億円。検察は、発注者として森元次長が談合の中心にいたと指摘した。
その後の被告人質問。弁護人は念を押すようにたずねた。
弁護人「起訴内容について争わない?」
森元次長「はい、間違いありません」
弁護人「いろいろ言いたいことはあると思うが、争わない?」
森元次長「はい」
淡々と返す言葉とは裏腹に、本音を押し殺しているようだった。
「いろいろ言いたいこと」とは、何を示すのか。
「トカゲのしっぽ切りをされたってこと」。森元次長をよく知る関係者は、取材にそう打ち明けた。
2014年に発足した組織委…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル