原子力発電所から出る使用済み核燃料を一時保管する「中間貯蔵施設」について、中国電力が、山口県上関町に対し、施設を建設できるかの調査実施を提案することが1日、関係者への取材でわかった。2日にも中国電幹部が同町の西哲夫町長と面会し、方針を伝える予定だ。
関係者によると、中国電は、上関町内に中間貯蔵施設を建設できるかを見極めるため、地盤などを調査する計画を西町長に伝えるとみられる。
上関町で中間貯蔵施設の計画が進めば、東京電力と日本原電の出資で青森県むつ市にできた中間貯蔵施設に続いて2施設目となる。
上関町ではおよそ40年前から中国電が原発建設を計画し、2009年4月からは敷地造成などの準備工事に着手していた。しかし、11年の東京電力福島第一原発事故以降、計画は中断。町は中国電に新たな地域振興策を求めてきた。
国は、中間貯蔵施設の建設に向けた調査段階から、立地自治体に交付金を出すことにしている。調査から都道府県知事の同意まで最大で年1・4億円、知事の同意後の2年間は最大で年9・8億円、建設や運転段階では貯蔵量などに応じて交付金を出す。
政府は使用済み核燃料を再処理してプルトニウムやウランを取り出す「核燃料サイクル」政策を掲げている。中間貯蔵施設は、再処理まで一時的に使用済み核燃料を保管する場だ。
しかし、青森県六ケ所村の再処理工場は稼働しておらず、政策は実現していない。全国の原発では、プールで冷却保存したり、専用の金属容器に入れて保管したりしており、その量は増え続けている。
電気事業連合会によると、今年3月末時点で、大手電力9社と日本原子力発電(原電)が原発内の容量2万1350トンのうち、貯蔵量は7割超に達している。中国電力も6割超が埋まっている。(松田史朗、岡田将平、伊沢健司)
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中間貯蔵施設 原子力発電所で使い終わった核燃料を再処理して再び使うために、一時的に貯蔵する施設。国内には、青森県むつ市に最終的に5千トン規模の使用済み核燃料を最長50年にわたって保管する施設が整備しており、一部が完成している。燃料は金属キャスクと呼ばれる専用容器に入れられ、燃料の熱は空気で冷やされる。政府は、使用済み核燃料を同県六ケ所村の再処理工場に運び、ウランとプルトニウムを取り出して再び燃料にする「核燃料サイクル」を描いている。しかし再処理工場が完成していない。全国の原発には使用済み核燃料がたまり続けているが、原発内での保管に限界があり、中間貯蔵施設の整備が課題になっている。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル