夏真っ盛りのこの時期は、旅行や留学などで海外に向かう人が多いシーズンだ。だがこの夏は、円安や航空運賃の高騰で、さまざまな異変が起きている。「高額でも学生のうちに」と飛び立つ大学生がいる一方、一般旅行客は高所得者層をのぞき、様子見のようだ。(江戸川夏樹、植松佳香、編集委員・増谷文生)
「これまで我慢していた学生たちが、コロナが落ち着いて一気に長期留学に踏み切っている。渡航費が高騰しても、何とか工面しているようだ」
東京外国語大の篠原琢副学長(教育担当)はそう話す。同大では今夏、長期(おおむね5カ月以上)で海外留学に行く学生が、過去最多の279人となった。
一方、通常は1年生が行くことが多い短期留学は、今夏は2、3年生が多いのが特徴。篠原副学長は「留学を希望する学生が多いのに実現できず、フラストレーションがたまっていた。航空運賃や滞在費の高騰は続いているが、家族も積極的に後押ししているようだ」と話す。
異変は昭和女子大(東京)にも出ている。同大は2021年度の卒業生まで、卒業生が1千人以上いる全国の女子大で「実就職率」(進学者を除く卒業生の就職率)が12年連続1位だった。だが、今年は国際学部で卒業後すぐに就職せず、長期留学する学生が続出。このため、今年3月の卒業生の実就職率は3位となったという。同大広報部は「カリキュラムに海外留学が組み込まれた学部のため、コロナ禍で渡航できず苦しんでいた学生が多い。中長期のキャリアを考えて留学を優先した卒業生たちに、エールを送りたい」とする。
日本から海外への航空運賃は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けたエネルギー価格の高騰などにより、コロナ禍前の19年と比べて多くの路線で値上がりしている。各航空会社によると、2~4割上がっているという。
円安も進んだ。コロナ禍前の19年8月は1ドル=106円程度だったが、現在は143円。円の価値は4分の3程度に下がったことになる。
留学あっせんも行う専門雑誌「留学ジャーナル」によると、日本の大学の海外留学はコロナ禍で中断していたが、昨年から徐々に再開。今年度は7割超の大学が実施する。広報担当の石沢京子さんは「もともと『高い買い物』である留学に子どもを送り出す家庭は、渡航費が高くても頑張って送り出す。一方で余裕のない家庭では断念するケースもあり、二極化が起きている」と話す。
「出稼ぎ留学」の言葉も
石沢さんによると、「出稼ぎ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル