「宛先不明の為(ため)持ち帰りました」
大雨が降りしきる夜、佐賀県唐津市で飲食店を経営する河上彰範さん(46)の携帯電話に突然、こんなショートメッセージ(SMS)が届いた。送り主には、大手の宅配業者の社名があった。
ちょうど、取引先とのやりとりで慌ただしいさなかだった。
店には毎日2回、配達と集荷で業者が訪れる。ずぶぬれになりながら右往左往する配達員の姿が脳裏に浮かび、「早く返信しないと」と思った。
メッセージに記されたURLをタップすると、入力画面が表れた。
1万4千円の課金が21回
iPhoneでアプリや音楽をダウンロードするときに必要な「アップルID」とパスワードを打ち込んだが、なかなか次の画面に進まない。何度も同じIDとパスワードを入力した。
それからわずか数分後。ネットショッピングの決済を知らせるメールが次々に届いた。中国人向けゲームとみられるアプリに1万4千円相当の課金が21回繰り返され、総額は29万4千円に上っていた。いずれも身に覚えはなかった。
「やられた」
河上さんはそこで初めてフィッシングの被害に遭ったと気付いた。2021年5月14日のことだった。
慌てて、IDにひもづけられたカード2枚について、それぞれのカード会社に連絡を取った。
偽のサイトに誘導し、個人情報を盗み取る「フィッシング詐欺」の被害が減りません。「私は大丈夫」と思っていても引っかかる手口、情報が売り買いされる闇のサイトの存在……。国内で初めて確認されて20年近くが経っても衰えを知らない犯罪のリアルに迫ります。
補償を断るカード会社も
1社はすぐに補償の手続きを…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル