暗闇の中、手榴(しゅりゅう)弾を手に敵陣へにじり寄る。木の葉から落ちる露の音さえ、敵の見張りかとドキリとする。あの恐怖は、今も忘れられない。
1943年4月、五十嵐巖さん(101)=新潟県上越市=は、新発田の歩兵第16連隊に入隊した。ガダルカナル島の激戦で失われた兵の補充要員だった。
「生きて帰れぬと覚悟はしましたが、見送りにきた母は胸の内で泣いていたのでしょう」
理不尽なビンタが飛び交う厳しい訓練を経て、所属する第2大隊は9月、日本を出発した。船でフィリピン、シンガポールを経由。目的地のビルマ(現ミャンマー)に着いたのは44年1月だった。
このころ、ビルマの日本軍はインドとの国境を越え、英領インド北東部の要衝インパールに攻め込む「インパール作戦」を実行に移しつつあった。五十嵐さんの部隊は、後方で待機した。
3月に作戦は始まったが、ず…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル