山浦正敬
津波で沖に流された人を早期発見して救出につなげようと、GPS(全地球測位システム)機能付き救命胴衣を開発する民間プロジェクトが動き始めた。東日本大震災で被災した宮城県南三陸町と連携し、29日に海で実証実験をする予定だ。震災で同僚を失った元町課長の提案がプロジェクトの原点という。
プロジェクトの主体は「ガーディアン72」(東京都、有馬朱美社長)と関連の一般社団法人などで、7日に町役場で発表した。佐藤仁町長も同席した。
発表によると、救命胴衣のGPS装置は常時電源オンで、津波で沖に流された場合、陸側で受信する位置情報を使って、早期に救助に向かうことができる。結果的に行方不明者を減らし、亡くなった場合も早期に遺族の元に戻すことにつなげられるとみている。
GPS装置の位置情報は、災害時だけ示す仕組みで特許をとったという。救命胴衣は頭を守るフード付きのタイプで、メーカーから販売する予定。学校などの公共施設や高齢者施設への配備を想定している。
南三陸町は震災で、620人が死亡し、現在も211人が行方不明だ。当時の総務課長が、旧防災対策庁舎などで同僚を亡くした教訓から、救命胴衣の配備を提案したのが、今回のプロジェクトにつながったという。29日は志津川湾の5~10キロ沖の救命胴衣と陸側の受信局とで想定通りに通信できるかを確かめる。
プロジェクトは簡易なリストバンド方式も同時に開発中で、南海トラフ巨大地震などで被害が想定される和歌山県串本町や北海道様似町でも順次、実証実験を予定している。実用化は来年5月を目指す。
佐藤町長は「津波の被災地としては次に備えて何もしないわけにはいかない。病院職員のように、患者の世話で逃げられないような人たちにまず配備すれば、犠牲を1人でも少なくできる」と期待を寄せた。(山浦正敬)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル