編集委員・北郷美由紀
2030 SDGsで変える
色づかいや文字の形などを工夫して、情報をわかりやすく伝える「メディア・ユニバーサルデザイン(MUD)」の取り組みが広がっています。視覚に障害のある人や高齢者、外国人ら、多様な人々の特性をふまえながら、進められています。「誰ひとり取り残されない」というSDGsの理念を具体化する実践です。(編集委員・北郷美由紀)
カラフルなイラスト? 人によってはそう見えない
東京・浜松町のイベント会場で18日から3日間、「伝えるためのユニバーサルデザインフェア」が開かれた。色とりどりの明るいイラストが、人によっては暗くて色も少なく見える。赤と緑、水色とピンクなどの組み合わせが見分けにくい人がいる。老眼や白内障で、文字や数字がにじんだり、ぼやけたりすることもある。多様な見え方を説明したパネル展示を前に、訪れた人からは「知らなかった」との感想が漏れた。
催しを開いたのは、全日本印刷工業組合連合会と組合員有志が運営するNPO「メディア・ユニバーサル・デザイン協会」。誰でも情報を正確に受け取ることができる「情報保障」への業界の取り組みを紹介しようと、初めて企画された。
「男性の20人に1人は、色覚の特徴により、違った見え方をしている。こうした人たちにも見やすい印刷物を作ることが、製造者としての責任を果たすことだと思った」。展示と並行して開かれたセミナーで活動のきっかけを話したのは、和歌山県で印刷会社を営む白子欽也さんだ。
白子さんは仲間の会社とともに、同県海南市から発注を受けた約2千枚の「海抜表示看板」を、協会のMUD認証に沿って作った。大きな波のイラストに「うみからのたかさ」という説明。耐久性を高めつつ、夜でも見やすいようにした。
協会がかかわった製品には、避難所の設営に使うシールセットもある。受付やトイレの場所、ゴミの分別が一目でわかる。掲示板に貼り出される情報を「医療」「食料」「伝言」などに整理できる。イラスト付きで、簡単にはがせる。
避難所では、駆けつけたスタ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル