松本英仁
北海道胆振(いぶり)東部地震で被災した厚真(あつま)町の厚真高校の生徒3人が9日、被災地ガイドとしてデビューした。3人は被害が大きかった苫小牧市や厚真町在住。同世代の札幌市の高校生たちを案内しながら、小学5、6年だった地震当時の体験を自らの言葉で語りかけた。
3人は2年の加藤迅さん(17)、1年の木村璃空(りく)さん(16)、蹴揚(けあげ)葉月さん(16)。大人の被災地ガイド8人が所属する厚真町観光協会が、特に若い世代に災害の経験を伝えてほしいと、昨秋に高校側に打診した。今春に3人が立候補し、東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市を訪れるなどして研修を重ねてきた。
初めてのガイドの相手は、札幌市を中心に防災啓発などに取り組む高校生団体「BLOSSOM(ブロッサム)」のメンバーら12人。37人が亡くなった町の中でも山の斜面が崩れて多くの犠牲が出た吉野地区などをバスで巡った。
地震で2人が亡くなった苫小牧市に住む加藤さんは集合住宅9階の自宅で地震に襲われた。「5階くらいでぽっきり折れると感じるほど激しく揺れた」。隣近所で声をかけ合い、停電前に浴槽に飲み水をためたり、脱出できるように玄関ドアを開け放したりした。「心の支えは何だったか」と問われ、「小さくても明かりがともっていたこと、家族が一緒だったこと」。
苫小牧市の木村さんは「どこに行っても電池が売り切れで、ろうそく4箱で1週間暮らした。今は電池の備えを多くした」。厚真長の蹴揚さんは小学校の宿泊学習で30キロ余り離れた北海道日高町にいた。家族の安否がわからず心細かった。避難所で振る舞われたラーメンに「小さな幸せを感じた」。
ブロッサムのメンバーは「同じ世代の人で対面で体験を聞くのは初めてで勉強になった」「ニュースだけではどこか人ごとだったが、ようやく実感できた」「発生から5年で危機感も防災意識も薄れがちだが、ぜひ全国への発信を続けて」。ブロッサムの活動を支援する宮城県東松島市出身の写真家鈴木貴之さん=札幌市=は「東日本大震災の被災地でも高校生ガイドはきわめて少ない。まずは行動を起こすことが大事だ」と話した。
町観光協会は今後、高校生ガイドの指名があった場合、3人に案内を依頼する。(松本英仁)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル