9月4日午後7時半ごろ、大津市内の琵琶湖で、不意に大輪の花火が上がった。でも、花火大会はなかったはず。取材すると、観光事情や課題も見えてきた。
記者は市役所を出たところだった。東の方角で音が鳴り、夜空に花火が広がった。慌ててカメラを取り出して撮影。打ち上げは、ほんの数分間だった。
翌日、市広報課を訪ねると、職員が「琵琶湖では、しょっちゅう上がっています。県外の人には珍しいでしょうね」。京都府出身の記者に「ミシガンかも知れない」と教えてくれた。
50発22万円…予算に応じて打ち上げ
「それはミシガンです」
琵琶湖汽船(同市浜大津5丁目)に尋ねると、担当者が即答した。4日夜は、団体客が大型観光船「ミシガン」を貸し切りにし、打ち上げ花火を鑑賞したという。
同社は花火鑑賞つきのクルーズプランを売り出している。船のチャーター料とは別に、50発(打ち上げ時間約2分)で22万円など、予算に応じて打ち上げるという。
コロナ禍で修学旅行に行けなかった学校が、思い出づくりに利用したり、企業が懇親会に使ったりすることが多いという。「あ、今日も花火が上がってるなと思って頂けたら」と同社の担当者。
花火の打ち上げは、びわ湖大津プリンスホテル(同市におの浜4丁目)も、宿泊者向けのプランとして売り出している。
花火は数量や大きさによって、消防に許可申請が必要になる。大津市消防局によると、昨年度の受付件数は15件だったが、今年は13日時点で19件。多くが琵琶湖での打ち上げだという。
雄大な琵琶湖と、夜空に浮かぶ花火。いかにも相性が良さそうだ。ただ、8月に大津港沖で4年ぶりに開かれた「びわ湖大花火大会」では、地元自治会が開催反対を決議するなどの不協和音があった。
「琵琶湖ならではの観光」知事も注目
三日月大造・滋賀県知事は9月7日、県議会会派との政策協議会で、「花火大会は琵琶湖のある滋賀県らしい、ならではの観光」としたうえで、「1日だけの花火で終わるのでは、一定の効果しか生んでいない。観光という視点で考えていくのはとても大事」と課題を指摘。「最近、大津港周辺でも散発で上がっている。こういった観光の呼び込み方も今後考えていきたい」と話した。(仲程雄平、林利香)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル