8月26日に開業した次世代型路面電車(LRT)は、振動の少なさが大きな特徴だ。宇都宮市と芳賀町を結ぶ約14・6キロの軌道の保守を担当し、快適な走りを支える土木係の仕事を間近で見せてもらった。
「接近!」。レールを清掃している土木係の職員に向かって、見張りに立っていたもう一人が大声で電車の接近を知らせた。2人は運転士に向かって片手を上げ、軌道脇に退避する。
近づいてくる車体に速まる鼓動
「うわー、近いですね」。2人の後ろに立つ私も思わず声が出た。黄色と黒のデザインのLRTが目の前を通り過ぎていく。時速40キロほどだが、大きな車体が迫ってくると、こころなしか鼓動が速くなった。
密着させてもらったのは8月29日。LRTの運行会社「宇都宮ライトレール」運輸企画部・施設保全課技師の柳田悠佑さん(28)と斎藤真希さん(28)に同行し、炎天下の軌道内を歩いた。
「電車が近づいたら絶対に私たちより前に出ないでください。運転士の方に背中は向けないでください」。同行にあたり、2人から注意を受けた。LRTはモーター音が静かなうえ、溶接でレールの継ぎ目もなくなっているので、音がなく、接近に気づきにくいという。ヘルメットと反射材のついたベストを借りて、緊張しながら軌道内に入った。
宇都宮市下平出町の車両基地から平石停留場を抜け、宇都宮大学陽東キャンパス停留場までの区間を点検し、再び基地に戻る1時間あまりのコースだ。
路面電車の軌道は道路に埋め込まれているため、溝にごみがたまりやすい。ごみはヘラでかき出して回収する。車輪が接触しやすい「ガードレール」の部分には、長い柄の付いたはけでオイルを塗っていく。
滑らかで揺れやきしみが少ない走りは、車両の性能だけでなく、日々の手作業によるメンテナンスにも支えられている。保線を担当する土木係は柳田さん、斎藤さんを含めて4人いる。
LRTは上下線とも数分~十数分間隔で運行しているため、すぐに次の車両がやってくる。2人は退避を繰り返しながら軌道内を歩き、ハンマーでボルトをたたいてゆるみの有無を点検。時折、ひざをついて軌道に顔を近づけ、レールにゆがみがないかをチェックする。
「毎回、同じ作業を繰り返すことが大切」
「金属なので暑さでゆがむこ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル