子どもを自宅や車内などに放置することを禁止する埼玉県虐待禁止条例改正案が6日、県議会の委員会で可決された。成人の「養護者」が小3以下の子どもを放置することを禁じ、小4~6については努力義務とする。罰則は設けないが、県民には通報を義務づける内容だ。
「虐待」の範囲を大きく広げる改正案を、児童虐待に詳しい関西大の山縣文治教授(子ども家庭福祉論)はどう見るのか。
具体的な禁止行為には反対
――今回の埼玉県虐待禁止条例改正案を、どう見ますか。
子どもを大切にし、子どもの安全を守るという理念としては大きな問題はないと考えます。
ただ、罰則はないと言うものの、具体的な行為をここまで規制する必要はないと思います。
――改正案に具体的な禁止行為は書かれていないものの、案を出した自民党県議団からは、小学生以下の子どもを自宅で留守番させる(100メートル先の近所の家に回覧板を届けるための一時外出も含む)▽子どもだけで公園で遊ばせる▽登下校させる▽おつかいに行かせ▽車内に子どもを残して買い物にいく――などの具体的な禁止行為が示されています。
車内の置き去りによる死亡が相次いだ今、特に暑い夏は、車内に子どもだけを残すことは危険であることは一定理解します。
しかし、それ以外にあげられている禁止事項については、小学生に関してはいかがなものかと思います。
実態ともずれています。例えば登下校も子どもだけでしてはいけないとなると、これだけ外で働く親が増えた今、保護者がずっとついているのは不可能ですから、学校が人を手配しなければいけません。そこまで考えられているのでしょうか。
――保護者にとっての影響も大きそうです。
保護者の生活も左右されます。この条例改正案を受けてニュースで「働けなくなる」と話している親の映像を見ましたが、不安はもっともだと思います。
とりわけ交代要員のいない母子家庭・父子家庭のことは考えられているでしょうか。本来やるべき改正だとは思いませんが、やるにしても、無料でシッターを頼めるようにするなどしないと、ひとり親家庭の生活が壊れてしまいます。
それからこの政策は議員提案のようですが、この禁止事項を守ろうとすると、子育て中の人が議員になりづらくなる可能性が高まりませんか。選挙運動を制限し、多様な背景の議員が生まれることを阻む気もします。
――国による統計では、子どもから少し目を離した隙にベランダから転落して亡くなったといった事故も、広い意味でのネグレクトとして「虐待死」に分類されていますね。
虐待を減らす目的に対して、この政策の効果は?議論で引き合いに出されている海外事例は適切?児童虐待の第一人者に聞いたロングインタビューです
私も検証に(虐待死を検証す…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル