東京都足立区の「源証(げんしょう)寺」で7月、地下納骨堂に練炭が置かれ、住職が一酸化炭素中毒で殺害された事件で、納骨堂は南北で2部屋あり、練炭は南側だけに置かれていたことが捜査関係者への取材でわかった。事件当時、納骨などで使われるのは南側が中心だったといい、警視庁は、殺人容疑で逮捕した墓石販売会社代表らが住職の行動や寺の構造を把握して事件を計画したとみている。
捜査1課などによると、千葉県の「鵠祥(こくしょう)堂」代表取締役の斎藤竜太(50)と役員の青木淳子(63)の両容疑者は共謀して7月22日深夜、源証寺に侵入。焼却炉にガソリン入りペットボトル十数本を入れると共に、納骨堂内に練炭28個を設置して着火し、翌23日朝、納骨堂に入った住職の大谷忍昌(しのまさ)さん(当時70)を一酸化炭素中毒で殺害した疑いがある。
捜査関係者によると、地下の納骨堂は南北に隣接して2カ所あり、地上部分の入り口も別々で、隣り合っていた。練炭は南側の床に置かれていたという。納骨堂内には壁に4段の棚があり、骨壺(こつつぼ)が置かれていた。
大谷さんは7月23日朝、練炭を見つけて南側の納骨堂に入ろうとし、一酸化炭素中毒で意識を失って倒れたと同課はみている。北側の納骨堂に置かれたのは古い骨壺などで、作業することは少なかったという。北側に不審な点はなかった。
納骨堂から約15メートル離れた焼却炉内には、ガソリン入りのペットボトル十数本が置かれていた。焼却炉を使うのは大谷さんが主で、納骨堂内の作業で出たゴミなど燃やしていたという。
捜査1課は、容疑者2人がこうした大谷さんの行動パターンを事前に把握していたとみている。納骨堂内での一酸化炭素中毒か、ゴミ焼却時に大量のガソリンを爆発的に燃焼させるいずれかの方法で、大谷さんを殺害しようとした可能性があるとみている。
鵠祥堂は源証寺近くの霊園「足立セメタリーパーク」の開発に関わり、販売などに関する契約を2020年3月に締結した。霊園の運営を巡って大谷さんと斎藤容疑者らの間に、対象とする宗派に関して意見の対立があったといい、同課は事件との関連を調べている。(増山祐史、遠藤美波、長妻昭明)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル