水俣病被害者救済法(特措法)に基づく救済を受けられなかった原告128人が、国や熊本県、原因企業チッソに損害賠償を求めた訴訟で、国は10日、原告全員を水俣病と認めて賠償を命じた一審の大阪地裁判決を不服として、大阪高裁に控訴した。熊本県も同日控訴した。チッソは4日付で控訴している。
地裁判決は、チッソ水俣工場がメチル水銀を含む水を不知火(しらぬい)海(かい)に流していた当時、沿岸地域に流通していた魚介類を継続的に食べていればメチル水銀に曝露(ばくろ)していたと推認。原告全員を水俣病と認め、国などに対し、原告1人あたり275万円、総額3億5200万円の賠償を命じた。
環境省は、チッソのみに賠償を命じた原告6人を除く原告122人について10日付で控訴した。判決について「国際的な科学的知見や(過去の)最高裁で確定した判決の内容と大きく相違する」として、上訴審の判断を仰ぐ必要があるとしている。
原告弁護団は判決後、被害者の高齢化などを理由に、環境省に控訴断念と話し合いによる早期解決を求めていた。救済法の対象から外れた未認定患者による同様の訴訟は、熊本、東京、新潟の各地裁でも起こされている。(市野塊、矢田文)
国・県「水俣病行政の根幹に関わる」、一方で進まぬ被害実態の把握
水俣病の認定範囲を大幅に広げ、原告全員が水俣病と認められた大阪地裁判決に対し、国や熊本県が10日、控訴した。「水俣病行政の根幹に関わる」(蒲島郁夫・熊本県知事)と上級審での判断を仰いだが、被害の実態把握も進まぬまま、時間ばかりが過ぎる。
水俣病は、汚染された魚介類を食べることなどでメチル水銀に曝露(ばくろ)し、発症するとされる。
環境省は、地裁判決について▽毛髪中のメチル水銀濃度が世界保健機関(WHO)が公表している目安を下回る場合にも、発症を認めている▽国は曝露から発症まで「長くて1年程度」、過去の最高裁判決でも「長くて数年」としているが、十数年経過後の発症も認めている、などと主張。「国際的な科学的知見や最高裁で確定した判決内容と大きく相違する」とした。
蒲島知事は「ずっと頼ってきた判決と大きく異なるのであれば上級審の判断を仰ぐべきじゃないか」と説明した。
ただ、実態を明らかにするす…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル