「日雇い労働者のまち」として知られる大阪市西成区の釜ケ崎周辺に、ベトナム人が営む料理店や家電店が相次いでオープンしている。なぜ西成なのか。3階建てのビルでレストランを開業したベトナム人店主を取材した。
労働者たちが求人情報を求めて訪れる西成労働福祉センターから西へ歩いて5分ほど。
ベトナム語の看板を掲げた料理店、食材店、家電店が立ち並び、ちょっとした「ベトナム通り」となっている。
多くが最近できたばかりの店。3階建てのビル全体を借りて営業するベトナムレストラン「ニャトフォン」も昨年12月にオープンした。
店名は日本語で「一風」。この地で強い風を吹かせたいとの思いが込められている。
店主はチャン・ゴク・ビンさん(29)。
2018年に留学生として来日。通訳の仕事をした後、千葉県のベトナム料理店で働いた。
西成では多くのベトナム人が暮らし、知り合いもいる。
「ここならやっていける」。身内から借金して挑むことにした。
ホーチミンの日本語学校で一緒に学んだ友人2人も来日し、店に出資してくれた。
通常は1階で営業。2階は結婚式の2次会など団体向け。3階はいずれカラオケができるようにしたいという。屋上では4月からバーベキューもしている。
ビンさんの婚約者のグェン・ティ・ゴック・ガーさん(29)も今年4月から、スタッフとして働いている。
2人はホーチミンの日本語学校で知り合った。ガーさんは客席に食事を運び、ベトナム人のなじみ客と会話をかわす。
ガーさんは「ビンさんと一緒にこの店をはやらせ、2号店や3号店も出したい」と夢を膨らませる。
日本人にベトナム料理のおいしさを伝えたい――。そんな思いで始めた店だが、順風満帆とはいかなかった。
開店の準備中、店の入り口に置いていた食洗機の部品が盗まれた。
「日本ではこんなことがない…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル