野田一郎
津軽海峡に面する北海道福島町の大千軒(だいせんげん)岳(標高1072メートル)の6合目付近で2日、登山者とみられる遺体が見つかった。損傷が激しいことから、道警などは登山者が10月29日ごろに1人で入山した後、ヒグマに襲われた可能性があるとみている。近くにはヒグマの死骸があった。現場周辺では同31日に消防隊員3人がヒグマに襲われ、ナイフを刺すなどして撃退しており、同じヒグマの可能性もある。
登山中にヒグマに襲われた死亡事故と認定されれば、半世紀以上前の1970年以来の惨事となる。
松前署などによると、遺体が見つかったのは中腹の「千軒銀座」(標高480メートル)と呼ばれる地点から、急傾斜を上った「休み台」の手前で、登山道から外れていた。性別は明らかになっていない。
登山口の駐車場には乗用車が止まったままになっており、運転してきたとみられる北海道函館市の20代男性と連絡が取れないことから、1日から関係機関が捜索していた。男性は友人に「10月29日に山に登る」と連絡していた。遺体の近くにあったリュックの中から男性の運転免許証が見つかったという。
遺体から数十メートル離れた場所ではヒグマが死んでいた。近くでは同31日午前10時ごろ、休暇を利用して登山をしていた消防隊員3人がヒグマに襲われた。隊員の1人が持っていたナイフでヒグマののど元を刺すなどして撃退していた。同じヒグマの可能性がある。
町などは1日から登山口のゲートを閉めており、来季まで入山禁止にする方針。
北海道ヒグマ対策室によると、ヒグマに襲われた登山者が死亡する事故は、1970年7月に十勝地方の中札内(なかさつない)村で18~20歳の男性3人が犠牲になったのを最後に起きていない。その後49年間、登山中の事故は起きていなかったが、2019年夏に同村で登山者が軽傷を負う事故が2件起きていた。
北海道ヒグマ対策室は、ヒグマの生息地で登山をする場合、①1人で行動しない②鈴などの音を鳴らして人間の存在をヒグマに知らせる③撃退スプレーを携行する――ことを呼びかけている。担当者は「基本的な対策をとっても事故は完全にはなくならないが、安全性はより高くなる」としている。(野田一郎)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル