コーディネーター・高橋末菜
計画を立て、効率よく目標を達成する――。ビジネスでも教育の場でも日常的に求められることだが、それは本当の「豊かさ」につながるのだろうか。探検家でノンフィクション作家の角幡唯介さんと、「限りある時間の使い方」の著者でジャーナリストのオリバー・バークマンさんが、朝日地球会議2023で「『限りある時間』と冒険 不確実性を生きる」をテーマに語り合った。
角幡さんは、太陽が昇らない真冬の北極を犬ぞりで狩りをしながら旅してきた。綿密な計画をたてるのではなく、その日の天候や氷の状況などで行動を変える「漂泊」というスタイルが特徴。現在地などを確認するための全地球測位システム(GPS)も持ち込まない。効率性とは逆の考え方を実践する。
こうした「不確実」な旅をするのはなぜなのか。角幡さんは「目標地点に計画的に効率的に進もうとすると、一日の行動距離などのノルマに従うようになる」と話す。「以前そうした旅をしたが、北極の表面しか歩いていない感じだった。目の前の事象を真に経験するには、計画を捨て、状況に反応できるようにしなければならない」
「あらゆるものの制御不能性と、どうつきあうか。不安に耐え、死も含めて、どう折り合いをつけるか。その負荷を受け入れることで『本物』を感じることができる」とも話した。
こうした考え方は、バークマンさんと重なる。以前は時間管理や生産性向上を重視していたというバークマンさん。「でも、心に平穏はもたらされず、人生をコントロールできている感覚もなかった」と話す。
著書で「確かさを追求すると、物事の真意を探究できなくなる。不確実な中にあるからこそ、人はその実力を発揮することができる」と書く。
対談でバークマンさんは、角…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル