森下裕介
東京高検検事長だった黒川弘務氏=辞職=の定年を延長した2020年の閣議決定を巡り、国の関連文書の不開示決定取り消しを大学教授が求めた大阪地裁の訴訟は1日、当時の法務事務次官で前仙台高検検事長の辻裕教氏の証人尋問が行われる。教授側は、被告の国側が「作成していない」などと説明する関連文書について、当時の法務省の事務方トップに質問する予定だ。
辻氏は法務省官房長、刑事局長などを経て、19年1月に事務次官に就任。閣議決定は20年1月、黒川氏の定年を目前に行われ、「検察官に適用しない」とされてきた国家公務員法の勤務延長の規定を使い、黒川氏の定年を半年間延長した。
当時の安倍晋三政権は「法解釈を変更した」とし、森雅子法相は「省内で口頭決裁した」と述べ、文書は残していないと説明した。野党側は「検察人事への政治介入だ」と厳しく追及した。
原告の上脇博之・神戸学院大教授は20~21年、法務省内の協議について記録した文書の開示を請求した。しかし、法務省はほとんどの文書を「作成していない」などの理由で不開示にした。上脇氏側は「請求した文書は公文書管理法などで作成が義務づけられている。存在しないことはありえない」と訴え、辻氏の尋問を地裁に求めた。
地裁は当初、法務省の実務担当者が適当ではないかとして、国側に代わりの証人を提案するよう求めた。だが、国側が拒否し、地裁は今年6月、辻氏の尋問を決めた。辻氏はこの時仙台高検検事長で、現職検事長に対する異例の決定だった。
辻氏は尋問に先立ち、地裁に陳述書を提出している。閣議決定について「検察官の一定期間の勤務延長はありうると考えた」「黒川氏の勤務延長が目的とは認識していない」としている。(森下裕介)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル