国が生活保護費の基準額を引き下げたのは生存権を保障した憲法25条に違反するなどとして、鹿児島県の男女30人が鹿児島市などに保護費の減額決定を取り消すよう求めた訴訟の判決が15日、鹿児島地裁であった。坂庭正将裁判長は基準額引き下げが「厚生労働相の裁量権を逸脱している」などとして、減額決定を取り消した。
国は2013~15年、物価下落を理由に、生活保護費のうち食費など日常生活に必要な生活扶助の基準額を最大10%引き下げた。受給者が保護費減額の取り消しなどを求めて29地裁に提訴。原告弁護団によると、今回の判決が24件目で原告勝訴は13件目。22年5月の熊本地裁判決以降は15件中12件で原告が勝訴している。高裁判決は2件出ており、昨年11月の名古屋高裁では原告側が勝訴した。
判決は、厚労相が算定し、引き下げの根拠の一つとした独自の物価指数について、「生活保護世帯の消費構造と異なっている」などとして「統計など客観的な数値との合理的な関連性を欠く」と指摘し、裁量権の逸脱を認め、違法と判断した。
「引き下げにより精神的損害を負った」として原告1人につき1万円を求めた国家賠償については「取り消しにより回復される」として退けた。(宮田富士男)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル