困窮家庭や子ども食堂に食品を届けるフードバンク団体を支援する一般社団法人「福岡県フードバンク協議会」が4月に発足して半年が過ぎた。県内を中心に協力企業の開拓に取り組むが、食品提供の協定を結んだのは6日現在、14社にとどまる。フードバンク活動の認知度不足に加え、提供品による食中毒などのリスクを懸念して二の足を踏む企業が多いことも要因となっているようだ。
「問題が起きた場合、協議会で対応してください」。佐賀県の食品メーカーは9月、こう念押しした上でレトルトカレー約180キロの提供を決めた。協議会は企業側と協定を結ぶ際、品物の転売禁止や適切な品質管理、トラブルが起きた場合は協議会側が対応するなど13項目の取り決めを行う。だが、メーカーの担当者は「消費者からのクレームに不安があった」と明かした。
協議会はエフコープ生活協同組合と福岡、北九州両市のフードバンク団体が中心になって設立。企業から無償提供された食品などを、県内で活動する四つのフードバンク団体に配る。
「食材が足りない」「運営資金が不安」の声も
協議会が独自に協定を結んだ企業は福岡、佐賀両県の14社で、提供量は計約10トン。時期によって提供量にばらつきがある上、調味料や飲料水が多く、主食の米はほとんどないという。活動資金を援助してくれる賛助会員も6社、計約100万円と伸び悩み、各フードバンク団体からは「食材が足りない」「運営資金が不安」との声が寄せられる。
協議会が8月、福岡県を中心に104企業・団体にアンケートしたところ「フードバンクに関心がある」と答えたのは4割、「支援を検討している」は1割だった。「関心がある」と回答した企業や団体でも、実際に担当者と面会できるのは2割程度。シンポジウムやセミナーを開くなど周知にも力を入れるが、「協議会だけの活動には限界がある」(関係者)という。
フードバンク活動が社会に根付く欧米では事情が異なる。半世紀以上前に活動が始まった米国では、食中毒などのトラブルが起きても提供者側は免責される制度がある。フランスでも大型スーパーを対象に食品の廃棄を禁じる法律があり、フードバンクなどに寄付しなければ罰金が科される。
全国フードバンク推進協議会の米山広明事務局長は「法整備がない日本では企業側の責任が問われる恐れもあり、企業内の合意形成が難しい」と指摘する。
明治大の小関隆志教授(公共経営学)は「日本のフードバンクの歴史は約20年と浅く、外資系企業が少ない地方都市では特に協力が得られにくい。企業が安心して協力できる仕組みを早急に整える必要がある」と話している。 (御厨尚陽)
西日本新聞社
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