かつて北海道の主要都市を結んだ鉄路が31日、ラストランを迎える。117年の歴史を持つJR根室線の富良野―新得(しんとく)間(81.7キロ)は廃線・バス転換され、昭和や平成の時代、映画やドラマの舞台となった駅も役目を終える。鉄路や駅は消えても、そこで暮らした人びとの思いや記憶は続く。どこまでも――。
2両編成の車両が富良野駅を滑り出した。車窓からみえる家々がまばらになると、緑色の屋根が鮮やかな無人駅がみえてくる。
「北の国 此処(ここ)に始(はじま)る」。脚本家・倉本聰さんの筆による木製の記念碑が駅の前に立つ根室線の布部(ぬのべ)駅(富良野市)。テレビドラマ「北の国から」の舞台で知られる。
高い位置にあるホームから駅舎にいくにはいったん線路に降りる必要がある。1981年放送の第1話で、田中邦衛さんが演じる主人公「五郎」、吉岡秀隆さんの「純」、中嶋朋子さんの「蛍」の黒板家の3人がこのホームに降り立った。
布部駅は、近くにある東大の演習林から木材を運ぶため、「東大請願駅」として27(昭和2)年に設置された。その1世紀近くに及ぶ歴史に3月末で終止符を打つ。
駅近くで個人商店を営む坂口道郎さん(88)は終戦直後、駅の窓口が切符を求める人であふれたことを懐かしむ。「駅があって街がある。そのときどきの暮らしやいろんな思いが秘められている。駅がなくなると、街も相当さびれていく感じがする」と惜しむ。
布部駅の駅舎は4月以降、JR北海道が管理するが、引受先が決まらなければやがて解体される。富良野市は地元や観光協会に意向を確認したが、高齢化や人手不足で具体化しなかった。
「北の国から」の布部駅 中嶋朋子さん「良き形で残れば」
一人暮らしの坂口さんが「宝…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル