育った地で働き、町を前よりもよくしたい。自分のように能登を離れた人も、いつか帰れるように――。新社会人たちがそれぞれの思いを胸に、門出を迎えた。1日で能登半島地震から3カ月。(島崎周、玉木祥子、土井良典、上田真由美)
石川県輪島市の市庁舎。新たに職員となる14人の代表として名前を呼ばれた松野光(ひかり)さん(18)が、「決意表明」と書いた紙を読み上げ始めた。「ついこの間までは、輪島市民として支えられるだけだった自分が……」
景勝地「鴨ケ浦」の海岸で遊び、みそ汁は輪島塗のおわん。輪島の自然や文化が大好きだ。だが通っていた小学校は新入生がいない時期もあり、若者を見かける機会は減っていく。過疎化に危機感を募らせ、地元に貢献したいという思いを膨らませた。
輪島を舞台にしたNHKの連続ドラマ「まれ」で、主人公が市職員になったストーリーを見て、中学のころから市職員の仕事を意識するようになった。高校2年の時には、市役所でのインターンシップも経験した。
昨年12月に市から内定をもらったが、年が明けて地震が発生。直後に身を寄せた避難先では、食事の用意を手伝うことくらいしかできず、「人のために何もできない」と無力感が募った。これで市職員が務まるのかと不安になった。
一方、2次避難先では市外の…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル