岡山県の東備地区で最大の商業ビル「旧アルファビゼン」(備前市西片上)が解体と再利用の間で揺れ続けてきた。今年6月に、吉村武司市長が市庁舎の移転候補にすると表明し、議論を巻き起こした。取得の経緯や整備費の未収金、盗難事件なども尾を引いている。10年余りの迷走の歴史を整理した。
旧アルファビゼンは2005年3月、市が破産管財人から5550万円で購入した。当初、栗山志朗市長(当時)は購入しない考えだった。しかし、同年初めに、現市長の吉村武司氏らと、吉村氏が代表取締役の勝英自動車学校が購入費と同額の寄付を申し入れたことから考えを翻した。
市議会議事録などによると、市は同年、一般寄付として5550万円を受け取り、その後、条例で「旧アルファビゼン整備基金」に積み立てた。08年に地元のNPO法人「片上まちづくり」と契約を結び、貸し出すことにした。市は翌09年、吉村氏らに寄付金を返還した。
返還理由を、西岡憲康市長(当時)は市議会で「整備目的の寄付だったが、(貸し出しで)整備する可能性がなくなった。寄付者からも返還を求められている」と答弁した。
しかし、関係者の間には当初、寄付は「購入費」との認識があった。栗山市長は吉村氏らの寄付について「買収費の寄付者」と市議会で答弁し、元市議長の三村隆康さん(78)は「我々は(市から)『購入費としていただく』と説明を受けていた」と話す。
その後、13年4月に吉村氏が市長に初当選した。吉村氏は市議会への答弁などで「私は整備のために寄付した。『返せ』と迫ったことはなく返還は市が言ってきたものだ」としている。
一般寄付金は元々、返還義務がない。後に整備目的の基金に積み立てられたことが、返還の妥当性に疑義を持たれることになった。
Article Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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