ラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会で「ONE(ワン) TEAM(チーム)」を合言葉に歴史的な躍進を見せた日本代表の選手たちが、台風15号などで甚大な被害を受けた千葉県内の被災地をボランティアに訪れ、持ち前のパワーを発揮した。支援を受けた被災者は「ラグビーで感動をもらい、ボランティアにも来てもらってびっくりした。お礼の言葉もない」と感謝した。
富津市の鋸山(のこぎりやま)を望む金谷港近くの国道沿いでひときわ目立つ古民家が、青山清和さん(62)が営むカフェ「えどもんず」だ。岐阜県の白川郷から約60年前に移築した築230年の合掌造りは、9月の台風15号で屋根が吹き飛び、屋根裏の3階から1階までが浸水した。ブルーシートを張ったもののすぐにはがれ、19号や21号に伴う豪雨で「プールのような状態だった」。
年代物の畳は分厚く、約200枚が水を吸って重くなっていた。「普通の人が10人がかりでやっと持てるほど。作業が進まなくて途方に暮れていた」という。市災害ボランティアセンターに「力のある人を」と頼んでいたところ、10月29日に「力強い人が行きます」と連絡があった。
現れた13人の中にいたのが、ラグビーW杯で活躍した日本代表の面々。フォワード(FW)のリーダー的存在でフッカーの堀江翔太(33)、同じくフッカーの北出卓也(27)、第一線でスクラムを組むFWのプロップ稲垣啓太(29)、密集からボールを回すバックスのスクラムハーフ流(ながれ)大(ゆたか)(27)、バックスのスタンドオフやセンターを務めた松田力也(25)の5選手だった。
5人は、ぬれてキノコが生え、発酵して湯気と悪臭を放つ畳の撤去作業に従事。最初は重さに戸惑った様子だったが、コツをつかむとかけ声とともにテンポよく畳を持ち上げ、窓から外に投げ下ろした。青山さんは「あのパワーはさすが。悪臭にも嫌な顔一つせず、明るく爽やかに作業してくれた」と振り返る。「笑わない男」と有名になった稲垣選手にも笑顔があったという。約4時間かけて30枚ほどを撤去。作業終了の時間になって5枚ほど残っていたが、「最後までやろう」と続けてくれた。
青山さんは2011年の東日本…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル