日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告(65)の会社法違反(特別背任)事件に絡み、虚偽の証言をしたとして東京地検特捜部が7日に偽証容疑で逮捕状を取った妻のキャロル・ナハス容疑者(53)が、ゴーン被告の保釈請求の際にも東京地裁に虚偽の証言をしていた疑いのあることが、関係者への取材で分かった。キャロル容疑者はオマーン・ルートの特別背任事件着手の約3カ月前から、重要な事件関係者にレバノンで面会するなど証拠隠滅を図っていたという。
昨年末、保釈中に海外逃亡したゴーン被告は日本時間の8日夜、レバノンで記者会見を開く予定とされているが、逃亡の経緯や動機のほか、妻が容疑者となったことについて、どう語るかも注目される。
ゴーン被告は平成29~30年、オマーンの販売代理店、スハイル・バハワン自動車(SBA)に日産から約11億円を不正支出させ、うち約5億5500万円を自身が実質保有するレバノンの投資会社、グッド・フェイス・インベストメンツ(GFI)に送金させたとして、特捜部が昨年4月4日に4度目の逮捕に踏み切り、同22日に起訴した。
逮捕状の容疑となったキャロル容疑者の証人尋問は同年4月11日、東京地裁の法廷で非公開で約3時間行われた。ゴーン被告の弁護団によると、尋問には裁判官と検察官、弁護人が出席。通訳を介し、質問の大半は検察官が行った。
GFIの代表はSBAの経理担当幹部で、特捜部が「事件の最大のキーマン」とみる人物。そのため検察官が証人尋問で経理担当幹部について尋ねたところ、キャロル容疑者は「知らない」「(インド人であることやSBAに勤務しているなどと聞いても)覚えはない」「会ったことがあるかどうか覚えていない」などと証言したという。
関係者によると、特捜部がゴーン被告の4度目の逮捕に踏み切った際に押収したキャロル容疑者の携帯電話の通信記録を分析したところ、その約3カ月前の一昨年12月末にレバノンで2人が面会していた疑いがあることが判明した。その後、弁護団はゴーン被告が起訴された昨年4月22日、地裁に保釈を請求した。
特捜部は当時、こうした事情から、キャロル容疑者を通じた口裏合わせなど証拠隠滅の恐れが極めて高いとして保釈に強く反対。一方、キャロル容疑者はここでも、弁護団を通じ、経理担当幹部を含め事件関係者の誰とも会っていないと主張した。このため、特捜部が一昨年12月末の経理担当幹部とのレバノンでの面会を指摘すると、キャロル容疑者は一転して認め、経理担当幹部について「事件関係者とは認識していなかった」と釈明したという。
特捜部は、これらのやり取りから、キャロル容疑者が経理担当幹部を事件関係者と認識していたのは明白で、一昨年11月に役員報酬を過少記載していたとされる金融商品取引法違反容疑などで逮捕、勾留されたゴーン被告に代わり、オマーン・ルート事件着手の約3カ月前から入念に証拠隠滅を図っていた疑いが強いと判断。保釈許可を得ることに加え、これらの行為を隠すために虚偽の証言を重ねたとみているもようだ。
地裁はこうした事実を把握していたため、保釈条件でキャロル容疑者との接触禁止を付けたとみられる。だが、結果的に国外逃亡を招いており、地裁の保釈判断が適正だったか改めて問われそうだ。
■特捜部、異例の説明
東京地検特捜部が、容疑者の逮捕状を取った段階で明らかにするのは極めて異例だ。その上、ゴーン被告とともにレバノンにいるとみられ、実際には逮捕が困難な妻のキャロル容疑者の逮捕状をあえて取った背景には、ゴーン被告が保釈条件で妻との面会を禁じられたことを「非人道的だ」などと批判していることがある。
キャロル容疑者が一連の事件に絡む「容疑者」であることを明確化することで、措置の適正さとともに、国外逃亡という事態に対する捜査当局の厳しい姿勢を国内外にアピールする狙いがあるとみられる。
特捜部の市川宏副部長は「キャロル容疑者は多数回にわたり証拠隠滅をした上、偽証をした疑いがあり、だからこそ東京地裁は保釈と同時に面会禁止にした。非人道的との批判は一方的で誤解があり、是正する必要がある」とした。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース