本人確認なしで利用できる後払い式のスマートフォン決済サービス「Paidy(ペイディー)」を使った新たな手口の詐欺行為が相次いで確認され、運営会社が警視庁への被害届の提出を検討していることが20日、分かった。インターネットを通じて個人間で物品を売買するフリーマーケットアプリの利用者が狙われており、キャッシュレス決済が急速に普及する中で、セキュリティーの甘さを突かれた格好だ。
相次いでいる詐欺行為では、公的書類などによる本人確認が不要で、携帯電話番号とメールアドレスのみで登録できるペイディーの後払いシステムと個人間で品物を売買するフリマアプリが悪用された。
加害者は実際には手元にない商品をフリマアプリに出品。落札されると通販サイトで同じ商品をペイディー決済で購入し、サイト側から落札者に商品を直接発送する。加害者側はペイディー側への支払いをしない一方でフリマアプリで売上金額を手にすることができる。ペイディー側は建て替えた料金を回収できなくなる。
個人取引で商品を購入したにもかかわらず、通販サイトから商品が届いたことを不審に思った落札者が通販サイトやペイディーに問い合わせて問題が発覚。ネット上では「二重の支払いを請求されるのではないか」などと不安視する声が広がった。
ペイディー運営会社によると、利用者からの相談件数は15日時点で142件に上っている。ペイディーは14日、「(利用者に)不当な経済的負担をかけないよう全社を挙げて対応する」とのコメントを発表。不正利用防止策の見直しを検討するとしており、通販サイトなどでの決済サービスを一時的に制限・停止するなどの措置を取った。
■「手軽さ」狙われたか
詐欺行為に悪用された「Paidy(ペイディー)」は厳格な本人確認なしに後払いで買い物ができる「手軽な決済」を売りに、クレジットカードを持たない層を中心にニーズを開拓し、急成長を遂げたサービスだ。専門家からは、その利便性が狙われた可能性を指摘する声が上がる。
ペイディーは平成26年のサービス開始からこれまでの5年余りで約300万アカウントの利用者を獲得。運営会社のホームページでは、ファッションや飲食、旅行といった385件(20日時点)の通販サイトなどで利用可能としており、今回、不正利用が目立った一部の大手家電量販店などでも代引きやクレジットカードと並んで支払い手段に取り入れられている。
ペイディーでは、スマホ端末に携帯電話番号とメールアドレスを入力し、端末にショートメッセージサービス(SMS)で配信される4桁の認証コード(数字)を入力すると使用可能となる。取得に個人の収入や借り入れ状況など支払い能力が審査され、取得に一定期間の日数が必要となるクレジットカードと異なる。
ITジャーナリストの三上洋氏は、加害者側が他人の身分証などを使って契約した「飛ばし携帯」で登録することで特定を逃れようとしている可能性を指摘した上で、ペイディーの利用者を選別するハードルの低さに触れ、「誰でも使えるというメリットが悪用を考える人間に付け入る隙を与えた。サービスの安全性を再確認する必要がある」と指摘する。
■Paidy(ペイディー) 金融ベンチャー「Paidy」(東京)が展開するスマートフォンやパソコンで使えるオンライン決済サービス。本人確認なしに携帯電話番号とメールアドレスだけで登録でき、1カ月分の利用額を翌月にまとめてコンビニ支払いや銀行振り込みでペイディー側に入金する仕組みで利用者を増やしている。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース