福岡県飯塚市で偽電話による詐欺被害が相次いでいる。飯塚署では今月、3件(16日時点)の被害を確認しており、半月で昨年1年間の認知件数6件の半分となった。偽電話詐欺の被害防止活動は長期間にわたり継続的に行われているが、被害が減らないのは「犯人側の手口が日々巧妙化していることが大きな理由」と署の担当者は指摘し、「自分は大丈夫と思わないでほしい」と訴える。
「後期高齢者に関する還付金があるので口座に振り込みたいのですが」
13日午後3時40分ごろ、飯塚市内の90代の男性が固定電話の受話器を取ると、市職員を名乗る男が、男性の名を口にし、こう話した。何のことかと考えているうちに「あなたの今の通帳だと振り込みができません」と続けた。市内に実在する銀行名を伝え「担当者から後で連絡がありますので」。次々と伝えられる情報に慌てているうちに“市職員”との電話が終わった。
まもなく“銀行員”から電話。「新しい通帳に変える手続きをします」「口座番号はわかりますか」「暗証番号は」「確認のため預金残高を教えてください」-。矢継ぎ早の質問に気持ちが焦り、とっさに重要な情報を伝えてしまった。
その後、上司を名乗る男から通帳の変更手続きの電話を受けていた際、銀行員をかたる女が家を訪ねてきた。男性は指示された通り、封筒に入れた通帳を女に手渡した。
数時間後、冷静になって疑念が生まれる。「これって詐欺じゃないか」。警察に相談し、すぐに銀行で取引停止を依頼したが、すでに100万円引き出されていた。最初の電話から約3時間のことだった。
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同署生活安全課の山口真哉課長によると、偽電話詐欺にはいくつかの共通する特徴があるという。
まずは「飯塚署生活安全課の田中です」というように、実在する官公庁や銀行の名と一般的な名字を名乗って、怪しい人間ではないと思わせる。次に、「還付金がある」や「詐欺グループにあなたの情報が漏れている」など、もっともらしい理由で電話をしてくる。そして、速いテンポで会話や質問を投げかけて焦らせ、冷静になったり、周囲に相談したりする時間をつくらせないようにする。複数の人物が登場し、すぐに次の展開が起こる「劇場型」と呼ばれる。
最近、キャッシュカードや通帳をだまし取る手法が増えているが、古典的手法と考えられている息子をかたる詐欺被害も発生し続けている。「女性を妊娠させた」「会社の金を横領した」「交通事故を起こした」など、動揺を生み、他人には相談しづらい理由を持ち出すことが多いという。
山口課長は「電話やはがきでお金の話が出たら不審に思ってほしい。特に電話でお金の請求をすることは絶対にないので、すぐに110番するか最寄りの警察に相談してほしい」と呼び掛けている。(長美咲)
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