中国の湖北省武漢市を中心に、新型コロナウイルスによる肺炎が広がっている。1月28日には武漢への渡航歴がないバス運転手の男性が、日本人では初めて新型コロナウイルスに感染していると確認された。
朝日新聞(1月28日)によると、男性は1月6~11日、12~16日の2回、武漢市からのツアー客を乗せた。1月14日に寒気やせき、関節の痛みが出て、22日に症状が悪化。25日に病院で肺炎の症状が確認されたという。
また、1月29日には、同じバスに乗っていたバスガイドの女性も新型コロナウイルスに感染していると確認された。
長い時間同じ空間にいたため、ツアー客から感染した可能性が高いと考えられている。業務中に感染したとすれば、労災になるのだろうか。労働問題に詳しい波多野進弁護士に聞いた。
●「労災認定される可能性が十分ある」
ーーこれは業務上災害と言えますか。
労働基準法施行規則をもとに考えると、今回の新型コロナウイルス感染は「その他細菌、ウイルス等の病原体にさらされる業務に起因することの明らかな疾病」に該当し、労災認定される可能性が十分あると思います。
ただし、これは裁判所の判断を拘束するものではありません。
ーー労災認定のポイントはなんですか。
因果関係が問題になります。男性の新型コロナウイルス感染に「業務起因性」が認められるかを考えていきます。
まず、今回の件は、男性が業務のため観光バスを運転していた際に、コロナウイルスに感染している可能性のある観光客とバス内で長時間一緒にいたという客観的な事実があります。
一方、男性の居住地である奈良県において、コロナウイルスの感染報告はそれまで他になく、ご本人も感染の中心となっている中国への渡航歴もありません。
バス乗務以外の私的な原因でコロナウイルスに感染したとは考えがたい状況からすると、今回のコロナウイルスの感染はバス乗務中に引き起こされた可能性が高いと考えられます。
【取材協力弁護士】
波多野 進(はたの・すすむ)弁護士
弁護士登録以来、10年以上の間、過労死・過労自殺(自死)・労災事故事件(労災・労災民事賠償)や解雇、残業代にまつわる労働事件に数多く取り組んでいる。
事務所名:同心法律事務所
事務所URL:http://doshin-law.com
Source : 国内 – Yahoo!ニュース