実は日常と地続きの問題ではないか
「#カミサマに満ちたセカイ」という連載を始めてから、2カ月ほどが経ちました。この企画のテーマは、その名が示す通り「宗教」です。特に「何者かにすがりたい」と思う気持ちの出どころを探してみよう、という気持ちで取り組んでいます。
中でもカルト宗教は、自分にとって、最も縁遠い世界の一つ。そのただ中で生きている人々の思いを知りたいという、ある種の好奇心に突き動かされた、というのが正直なところかもしれません。
元信者とのやり取りから気付いたのは、「カルトをめぐる様々な課題が、私たちが営んでいる日常生活と地続きである」という事実です。
「何のために生きる?」に対する回答
カルト集団と聞いて、地下鉄サリン事件(1995年)を起こした「オウム真理教」を思い浮かべる人もいるかもしれません。
公安調査庁によると、化学物質のサリンによって13人が亡くなり、負傷者は5800人以上に上りました。事件に関わったメンバーの中には、有名大学で学んだ後に入信した、という人が少なくありません。
真面目で賢く、社会的地位も得ながら、前例がないような大事件を起こす--。こうした事実は、社会に衝撃をもって受け止められました。教団関係者を取材してきたジャーナリストの江川紹子さんは、背景について次のようにつづっています。
彼らは、教祖の麻原彰晃こと松本智津夫(記者註:2018年に死刑執行)のどこに魅力を感じたのだろうか。私は、一時期それを信者や元信者に聞いて回ったが、圧倒的に多かったのは、「どんな疑問にも、たちどころに答えを出してくれる」というものだった。
とりわけ、生きがいや生きる意味などのように、容易に答えが見つからない問題について、麻原はすぐさま答えを出してみせた。それは、「オウムで修行すれば、解脱悟りに至る」「オウムの人類救済活動の手伝いをすることこそ、生きる道だ」といった、私から見ればワンパターンに終始するのだが、確信に満ちた物言いと自信たっぷりの態度は、悩みの中にいる者にとっては、力強く、信頼ができるものに感じられたようだ。
――出典:彼はどのようにして地下鉄サリンの実行犯になったか(Yahoo!ニュース個人)
「私は何のために生きているのか」。誰しもが一度は抱くであろう、根源的な問いに対し、明確な回答を与えてくれる。悩みのるつぼに投げ込まれたとき、そんな存在がいてくれれば、どれだけ心強いか。
こうした信者たちの胸の内は、私が話を聞いてきた人々の声と共通しています。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース