TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。2月21日(金)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、弁護士の三輪記子さんが“治療的司法”について見解を述べました。
◆「無罪の推定」原則とは?
歌手の槇原敬之さんが2月13日、覚せい剤取締法違反などの疑いで警視庁に逮捕されました。槇原さんは1999年にも同容疑で逮捕されており、ネット上には「覚せい剤を断つのは無理なのね」、「薬物が怖いものだとわかった」、「刑罰をもっと厳しくすべき」などのコメントが並んでいます。
まず三輪さんは前提として「『無罪の推定』原則が忘れられていませんか?」、「その情報はどこから?」と、2点について案じます。
無罪の推定原則について、「『疑わしいときは被告人の利益に』というのは刑事裁判における鉄則。だから立証責任は全て検察官が負う」と三輪さんは解説。さらには、「被告人に無罪の立証責任を負わせてはならない、無罪の立証に失敗したから有罪というのはおかしい」と言います。
これは無実の人を罰するようなことがあってはならないからあるもので、国際人権規約にも明言されているそう。日本も批准しており、「刑事上の罪に問われている全ての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する」とありますが、「刑事上の罪に問われるかどうかわからない人まで、まるで有罪かのような報道がないかと懸念している」と三輪さん。
◆問われるメディアリテラシー
そして、「逮捕したらその人を罰していいみたいな空気になることが怖い」と世間の風潮を危惧し、「その情報はどこからきているのか?」と問いかけます。「誰が発した情報なのか、警察の情報を100%信用していいのか、メディアの情報の情報源はどこなのかを今一度見てほしいし、それらは100%正しいのかをよく考えていただきたい」と主張し、「警察の情報をそのまま流すことにどこまで意味があるのかと思う」と苦言を呈します。
◆薬物依存は治療できる病気
一方で、薬物問題に関しては「あくまで一般論」と強調し、「薬物事案に厳罰は不要。世界では“非犯罪化”が主流になりつつある」と三輪さん。さらに、依存症は「回復可能」と言い、「排除したり、疎外することは回復にとって逆効果。依存症は再発を繰り返しながら治っていく病気ということを知らないから“厳罰に処せ”と言ってしまう」と指摘。
適正な罰を与えるだけでは再犯は防げないとし、「再犯が多いのは原因そのものにアプローチしていないから」と推察します。そして、再犯を防ぐべくケアの重要性を促し、「治療的司法という概念を知っていただきたい。それは社会全体で依存症の方を支えるなど、無罪推定の原則に基づいて報道を冷静に見ることが大事」と訴えていました。
スローニュース代表取締役の瀬尾傑さんも同意しつつ、三輪さんの意見に補足。覚せい剤で捕まった方の再犯率は65%。高いと言われていますが、「これは誤解」と断言する瀬尾さん。というのも、覚せい剤以外の軽犯罪など何かしらの犯罪を犯した人が65%であり、「この数字をもって覚せい剤をやった人は立ち直れないとか(覚せい剤を)繰り返すというのは全くの嘘。依存症であったとしても治療して向かい合えば治る」と言います。
4年以内の覚せい剤事犯再犯者もおよそ25%いるそうですが、「残りの約75%は再犯していない。それを考えれば、むしろこれは立ち直れる、治療できる病気であり、それを前提に考えてほしい。『あの人はまたやるよ』とかは全くの偏見」と話していました。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース